
創業120年余り、桃太郎大通りで和洋折衷の創作菓子を生み出し続ける「つるの玉子本舗」は、初代下山治四郎が明治20年(1887)に独立創業したのが始まりです。
池田家の御用菓子司で修業した和菓子職人の治四郎は、最先端の洋菓子マシュマロの製法も学びました。これを広く世の中に知ってもらう方法はないものか。思案に暮れながら、一般公開されたばかりの後楽園で一息つく治四郎。ふと目にしたのは優雅に舞う鶴の姿でした。明治時代に一世を風靡する創作菓子を思いついた瞬間です。
試行錯誤の末に誕生したのはマシュマロと餡で作った「つるの玉子」。見たこともないハイカラさが大評判となり、岡山銘菓として不動の地位を確立したのです。
林芙美子の「放浪記」第三部(新潮文庫) p.505に「義父が岡山の鶴の卵と云う菓子を買って来てくれた事を思い出した。」という一節があります。
昭和に入り、存亡の危機が訪れました。戦災で店が全焼し、腕の立つ職人たちを次々に戦地で失ったのです。しかし、父である初代から菓子作りを叩き込まれた二代目下山眞寿次によって、文字通り灰の中から復活しました。
和洋折衷の菓子作り技術と、常に新しいものを提案する心意気は、代々変わりません。「つるの玉子」を筆頭に、せんべいなのにクッキーの味がする「米のなる木」、お湯を注ぐと鶴が浮かぶ「お汁粉」など、次々に新商品を世に送り出してきました。
おやつの時間になると、店にある材料を使ってスタッフが密かに楽しんでいたロールケーキ。これをプレゼント企画に使ったところ、商品化希望の声がたくさん寄せられました。そこで生まれたのが「モモタロール」です。
商品化に向けてスタッフは徹底的に素材にこだわりました。井原市の放し飼い地鶏の卵を使ったスポンジ、最高級の生クリーム。素材の良さを引き出すために添加物を排除。苦労を重ねてできあがった完全手作り「モモタロール」は、白桃の他に季節限定の苺や栗も作ってほしいと要望が来るほどの大好評です。